影絵 1_01
- 2013/08/12
- 19:35
ブログを開設して三カ月。ようやく完成ナイフの画像を掲載することができます!
今回、記事のタイトルが意味不明な文字列ですが、今回掲載するナイフの名前です。前回の画像の二本の内の短いほうになります。
どうやら、このブログはカテゴリーとタイトルから記事を検索する機能を備えている様子。
記事が溜まっていったら、ちょっとしたWEBギャラリーとしてご覧いただけるかと思います。
というわけで、「ギャラリー」カテゴリの最初の作品画像です。
「影絵1_01」
全長400mm ブレイド長240mm
ブレイド:炭素鋼系ダマスカス
エッジ:白紙2号
ハンドル:綿・麻・ポリエステル樹脂・鉄・銅
シース:カイデックス(高橋智紀氏作)・鉄・銅
※画像をクリックすると大きいサイズの画像がご覧いただけます。
この作品は、ダマスカスブレイドに鍛造の痕跡を積極的に残してみたらどんな感じか?というテーマから生まれたものです。
ダマスカスの縞々を見えるようにするには、鍛造した後、表面を研磨して着色するという行程が必要ですので、普段のブレイドでは使っていない表現です。
最近、金槌の痕が残る鉄製品に触れる機会を多く得まして、それらの格好よさにあてられました。
着想が変わると、作品の作り方や表現も変わってきます。
今回は槌目を研磨で消さないように、ギリギリまで鍛造で形を作りました。
また、鍛造による造型を利用して、背中から割って二股に分け、片方をねじって、もう一度くっつけて巻いて鍛造しました。
…文字で書いても全然わかりませんね。途中の画像をご覧ください。
「背中から割って二股に分け、片方をねじった」状態です。
研磨しない部分を増やすなら、磨きにくい形もいける!と思い いたり、行程の途中から試してみました。
が、思いつきで余計なことをしたため鋼材に無理をさせ、背中の棒を一回捩じ切ってしまいました。
ちょっとしょんぼりします。
気を取り直して、別の棒を用意して挟み、鍛接してつなぎました。
以前書きましたが、高炭素鋼を扱う鍛造はデリケートです。
事前にしっかり形を決め、色々な制約や手順を守って鍛造しないとこのように加工中に折れたり、もろい刃物になってしまったりします。
しかし今回は、「鍛造の痕を積極的に残す」という思いつきを起点に、形をしっかり決めずに制作に取り掛かりました。
作る前に決める形は、僕のかわいそうな脳味噌で思いつく程度の形です。
前回の無駄マスカスもそうですが、手で作る技法のメリットの一つは、素材に自由にアクションを加え、見せる表情を細かく拾い上げ、表現につなげることができる事です。
ガックリしたり有頂天になったり、ダマスカスに翻弄されてゆく中で、色々な表現を学べます。
今までのその蓄積が、鍛冶屋でも何でもなかった僕の作品に、価値を見出してくださる方々と出会わせてくれた気がしています。
つまり皆様、僕の作品にはこれを求めておられるのでは…
何より、僕本人も翻弄されるのが楽しくなってまいりましたし、このダマスカス任せのデザイン法は今後たびたび行うと思います。
失敗が多く、余計な手間暇と燃料材料電力その他を消費する、製造業としては最悪の手法ですが…
リカバリのために、一から鍛造・熱処理工程を繰り返し、色々と消費する羽目になっているところです。
この後は比較的順調に進みました。
割った部分を纏めて、鍛接に取り掛かる状態です。
くっつけるためにとまとめただけなのですが、ぎっしり雰囲気がなかなか良いです。
今回はこれをこのまま鍛接し、ねじ状のテクスチャーを利用しましたが、「影絵」シリーズの別の作品で、このような形を試してみたいと思います。
鍛接を終えた部分を伸ばして丸め、ブレイドを鍛造で仕上げていきます。
槌目を残すことを意識し、ハンマーで形をほぼ完成させます。
なんだか忍者っぽい形になりました。
刃先を研ぎました。
磨いた鋼の部分にうっすらと縞が見えています。
槌目とのコントラストはなかなか渋いです。
今回の試みは成功と言えると思います。
棒を鍛接した部分も葉脈状の模様になり、いい感じにキマリました。
この形を鍛接で継ぐのは大変なのでもうやりませんが…
ブレイドができればあと一息です。
グリップは布を樹脂で固めたものです。FRPのようなリネンマイカルタのような…。
なかなか強靭で、ハンマーでがつがつ殴っても壊れません。
失敗するとやり直しに苦労します。
…以前苦労しました。
シースは、テクスチャーを付けたカイデックスです。
槌目のある作品に合うように、ざらざらしたテクスチャーを付けています。
カイデックスには以前から惹かれていたのですが、きれいに加工する技術を持っていませんでした。
しかしこの度、キクナイフスタッフの高橋君に協力して頂き実現しました。
キクナイフの鞘は彼が担当しているそうで…形も、縁の磨きも、パチッと止まるテンションもさすがのクオリティでした。
感心しつつ、なんどもパチパチ出し入れして遊んでしまいました。
そのカイデックスに、金具を銅リベットで取り付け完成です。
金具はネジ棒を鍛造していますので、ネジの模様がうっすら残っています。
と言うわけで、作品を、途中の画像を交えてちょっと解説させていただきました。
今後作品が増えましたら、こんな感じでギャラリーのページを増やしてゆこうと思います。
ではでは今回はこのあたりで。