鍛造機調整
- 2014/02/24
- 18:31
この鍛造機…ダマスカス制作において重要な設備の一つです。
幸運なことに二機入手できましたので、それぞれ違う役割を与えています。
手前のベルトハンマーは時間当たりの打撃回数が多くなるように調整し、打撃面には丸みを持たせました。
ある程度くっついた塊を一気に伸ばしたり、鋼材からナイフの輪郭と肉厚を叩きだす工程で便利です。
奥のスプリングハンマーは大きく打撃力が強いので、鋼材のブロックの鍛接や塊をつぶすのに使っています。
打撃面は広い平坦なものにしましたので、まっすぐな棒の反りを取ったり、板の面を整える際にも活躍します。
二台とも鍛造工程では働きっぱなしですが、ここ最近は細かい仕上げの作業に追われているので、のんびりしてもらっています。
この機会に、ちょっと気になっていたところを直しておくことにしました。
鍛造機は工房を構えて最初に設置した機械です。
重要な機械ですので念入りに準備し、間違いのないように設置しなければなりません。
ところが独立早々に巨大なダマスカス棒を打つ仕事が控えており、その作業をこなすために大慌てで据え付けました。
機械についても設置についても知識がまったくありませんでしたから、問題が起きないわけがありません。
当然いろいろな不具合が続き、繰り返し調整して来ました。
最初のいくつかの仕事は、ぐちゃぐちゃの作業場でひたすらこの機械を直しながらでしたね…
あれは今思い出してもゲンナリする苦行でした…。
二台のうち、最初に設置したベルトハンマーは特に手がかかりました。
現物を確認しないまま古いものを購入し、無理を言って短期間で動くように整備して送っていただいたモノでしたので、多くの問題を抱えていました。
ようやく設置しての試運転、その三発目でハンマーヘッドが折れ飛んだり…なぜか逆さまについている部品があったり…クラッチ周りの部品がゆるゆるで動作しなかったり…クラッチそのものも錆びていたのかしばらくただのON/OFF装置だったり、上のシャフトが抜けてきたり、いきなり弓の部分の平ベルトが切れたりさらにハンマーを吊るしている平ベルトが切れたりいろいろなボルトが折れたりゆるんだりモーターが………
大変でした。
しかし上記の事情に加え、銘版によると昭和42年9月生まれの古い機械です。
文句を言ってはいけません。
最初の頃はそんな調子でしたが、このブログの最初の記事を書く頃には、ベルトハンマーは一通り壊れて直し、新たに状態の良いスプリングハンマーも譲り受けて設置し、機械そのものは快調に動作するようになってくれました。
今回の調整は、主に機械を支える、基礎のコンクリート部分です。
ここでも苦労話がありまして…
この工場を借りる際、生活費を浮かせる為、大家さんにお願いして住み込めるようににいろいろ改造してもらいました。
それに併せて、鍛造機の基礎の設置もお願いしてみたところ、なんとそれも大家さんが挑んでくださいました。
このベルトハンマーは、鍛冶屋さんのように土間に穴を掘って設置することを想定した機械ですから、こういったコンクリートの床に設置するにはちょっと工夫が必要でした。
また、納期が迫っている仕事を遂行するため、とにかく早く鍛造機が使えるように…あと安く…と無理な注文もしました。
それらをクリアするため、基礎として護岸工事に使う大きなブロックを置き、その上に機械を設置。
そしてブロックの隙間にコンクリートを流し込んで金床を敷く、という大胆な工法が編み出されました。
おかげで、短期間で設置が完了し、早々に作業に取り掛かることができました。
しかし、使ううちにブロックは固定した鍛造機ごと移動するわ金床の基礎は割れて踊りだすわと、散々な結果に。
機械の力を侮っていました。。
何度か基礎の固定や金具による補強も試みながら、最初の下請け仕事はどうにかこうにか乗り切りましたが…
金床が暴れるおかげでどうにも鍛接がうまくいかないため、最初の基礎は壊してやり直すことにしました。
改めて業者さんにお願いして鉄筋を組んでもらい、普通より頑丈なコンクリートを流し込んでもらいます。
このブログの最初の画像は、その基礎が完成し、部材を組み立ててようやく再設置が完了した時のものです。
あれでやっと工房開設のバタバタが落ち着きましたね。
さて、さすが業者さんの基礎、直して以降は快適に作業ができました。
しかし最近になって、なぜか角材がうまく打てないことが多くなってきたのです。
気をつけていても鋼材の断面が平行四辺形に…
新たな不具合の香りがします。
最近、薄い刃物を鍛造したところ、何が悪いのか判明しました。
打ちあがったブレイドの厚みが前後左右で目に見えて違ったのです。
仕上げに使うスプリングハンマーの打撃面が傾いています。
計ってみると上側の打撃面の右と奥が1.5mmくらい下がっていました。下側は、若干左と奥が下がっていたようです。
実は最初に置いたブロックの高さが違い…
とりあえず早く仕事を進めようと、手近なコンパネや硬質ゴムで支えて高さを合わせていたのですが、一年近く経過してそれらが潰れ、上の打撃面が傾いてきたようです。
また、業者さんが打ってくれた基礎ですが、何故か真ん中が数センチ盛り上がって硬化してしまったため、そこをグラインダーで削ってもらって金床を設置しました。
ガタガタの研削面に金床の下に敷いた硬質ゴムが馴染んで、下側の打撃面も若干傾いたようです。
この状態でも使えるといえば使えるのですが、いまいち気持ちが悪いです。
水平になるように修正することにしました。
久しぶりに地上に降り立つスプリングハンマー。
付属品や大量の固定用ボルトを外すため、これだけで半日かかる作業です。
機械が乗る部分に、高さ差分のコンクリートを上塗りしました。衝撃がかかる部分ではないので保つとは思うのですが…
割れるようなら一旦アンカーを抜いて、高い部分を削ることになりそうです。
下側の傾きはどうしようもないので、水平器を当てながら打撃面を削って修正しました。
コンクリ硬化後再び設置。やはり半日くらいかかりましたが…
それでも最初のころは設置だけに数日かかっていましたので、だいぶ慣れてきました。
現時点で打撃面は平行になっているようです。
しばらく使って緩衝材などが馴染んでくると、各部のボルトが緩むので何度か増し締めしてやることになります。その時にも打面が並行ならば今回の調整は成功です!
うまく落ち着きますように…