2月の銀座ブレードショウにお持ちした品々です
- 2019/08/22
- 20:17
銀座ブレードショウは年に二回、節分と七夕の頃にあります。
しかし、僕には年に二回も出展できるほどの生産力がありませんので、2月のショウのみに出展させていただいています。
先月には7月のショウが開催されたかと思いますが、こちらには僕と入れ替わりに中山英俊さんが出展しておられます。変な鉄より繊細な造形をご覧になりたい方は是非夏のショウに!
…ということで、この記事は前々回のショウの思い出です。
銀座のショウではお客様にご注文を頂き、制作したものをお持ちすることが多いです。しかし、それだけではテーブルに売り物がない状態になり、出展時に肩身が狭いです。
毎度毎度、それ以外にも何かご用意しなければとバタバタしています。

その点では、今年は台湾のショウから持ち帰ったナイフが二本あり、ひとまず最低限はクリアしていました。
心に余裕がありましたので「何か手軽な小物も」と、久しぶりにライターを制作しました。
ダマスカスの板を市販のジッポに取り付けたシンプルな小品ですが、なかなか見栄えが良く、テーブルがちょっと華やかに感じられる便利な一品です。
今回の板には専用に作った横縞模様の板の在庫と、もう片面にはピザカッター円盤用の材料を分解したものを利用しました。
鋼材に用いる材料の中には、鍛接時に相性が悪い組み合わせがありまして、それらの間には別の
の素材を挟むようにしています。
しかし、この時のピザカッターの鋼材はそれを忘れてしまいました!
画像は別の鋼材ですが、同じミスをしたものです。鍛接時に不良箇所があると、伸ばす際に傷が広がり、こんな感じに割れてしまいます。
普通は直せますが、この組み合わせでは一度割れた部分がきれいにくっつきません。諦めて鏨を叩き込んで剥がし、平たく直して保管していました。
それが今回のライター装飾板にピッタリでしたので、生まれ変わってもらった次第です。
いつものSUSをメインにしたダマスカスより色が付く部分が多いので、カラフルになってテーブルを飾ってもらいました。
すると、ちょうどこのシリーズのお客様から修理のご用命が。またヒンジの部分が摩耗してしまったようで、蓋がぐらぐらです。
修理でお預かりする間の代打として、今回のライターもお買い上げいただきました。
ありがとうございました!
このライターは、僕の作品としてはダマスカスの板が本体です。ライター部が壊れると、修理と称して移植手術を行わせていただきます。
この板は二度目の移植、前回は2015年の2月に交換していますので、頻繁にお使いいただくと、3~4年程度で交換が必要になるようですね。ご愛用頂けましてうれしい限りです。
また、何かありましたらお申し付けください。
ちなみに移植時に外すためには角のピンを削り、抜き取る必要があります。
そして移植後には新しく叩き込んでしっかり締め、さらに工具で叩いてピンの頭を半球状に丸める作業を行います。
その過程で若干傷が増える場合がありますがご容赦を…
他には、いつもの小刀と、好評でした鉄の鞘のナイフも再制作しました。
今回は、最初と同じような模様になりました。
三度目で慣れてきたせいか、形は前より滑らかです。
内側の皮の鞘は入り口に段差を付けてはめ込んであります。内側の鞘が痛んだ際には取り換えることが可能です。
そして今回もおしりの渦巻きがチャームポイントです。
普通にねじって削っただけではこの模様があまり巻いてくれませんので、鍛造工程で工夫が必要です。
こちらもショウで無事にご縁に恵まれました。
同じ鋼材があと一本分ありますので、また制作しようと思います。
そして台湾以降連れまわしているこちらの二本、これらは今なお手元にありますので宣伝させていただきます!
この作品は、一見ワイヤーダマスカスですが、普通のダマスカスのブレードに、ダマスカスのねじった細い棒の束を接合した構造です。
正確には、刃先側に高炭素鋼のダマスカスの太い棒、背中側に細いダマスカス棒をまとめた棒、表にニッケルダマスカスの平角棒、と、三つの棒状の部材を打ちまとめて制作したものです。
ついでに尻尾の輪の部分にはツイストしてスライスしたニッケルダマスカスの板を貼り、それらをまとめました。

いろいろなダマスカスが一本で楽しめるアイテムです!
鞘に使った木材は本体が桂、表の板にビーフウッド、内側の一部分に朴で、金具は鉄です。
もう一本は昨年制作した小刀の新型です。
ブレイドには表裏にモザイクダマスカスとニッケルダマスカスとを組み合わせた鋼材を使いました。
そのブレイドの鋼材にある程度形にしたダマスカスの部品を貼り付け、形が残る程度に鍛接して固定し、柄にしています。
柄の先端には今回もステンレスのパーツを組付けました。無駄に分解できます!

鞘は革で制作し、樹脂をしみこませた綿布で覆って固めたものです。
今回は鞘にもう一工夫したいと思い、鞘の先端にもステンレスのパーツを取り付けました。
布部分は、なんだか今にも腐り落ちそうな仕上がりになりました。完成時にはのっぺりした仕上げだったのですが、ハンドルの見えているパーツとのバランスが今一つでしたので、剥いたり穴をあけたりしてしまいました。
本来は革だけでも十分鞘になりますので、強度は大丈夫です!
ナイフショウで展示する作品は、そのものをお買い上げいただけるともちろん嬉しいです。しかし、ご注文を頂く際にお見せする加工サンプルの役目もあります。
というわけで色々な素材、技術をお見せ出来るように、なるべく傾向の違う作品を並べるようにしているのですが、しばらく連れ歩く作品も出てしまいますね。
二つとも、出展が叶えば次は10月の関のショウのテーブルに並べる予定です。
ご興味がありましたら是非、会場でお手に取ってご覧ください。